山のように溜まった報告書に目を通し、一息つこうとした時に・・・通信機のライトがついた。

「・・・」

それは滅多に使われる事のない回線から送られてくる通信。
小さくため息をついた後、タリアは通信をオンにした。

「やぁタリア、随分と疲れているようだね。」

「お分かりでしたら、このまま通信を切らせて休ませて頂けますか。」

「それは困るな。君と直接話がしたくて、私も仮眠の時間を削っているのだから。」

笑顔でそう言われてしまい、苦笑しつつも彼の用件を尋ねる。

「で、ご用件は?」

「先日レイから面白い報告を受けてね。現在ミネルバにはアスラン・ザラだけではなく『紅の女神』まで乗船しているそうだね。」

「・・・」

「今、彼女は艦で何をしているのか教えて貰えるかな。タリア艦長。」

先程までの微笑は消え、何かを企むような議長の表情に口元を引き締める。

「彼女には山のように溜まった書類の整理をお願いしています。」

「それだけかい。」

「えぇ、彼女はただの民間人ですから。艦の重要機密からは遠ざけた一般雑務をお願いしています。」

「折角の能力がそれでは活かされないな・・・」

ポツリと呟いた議長の声を無視して、タリアはわざと議長から視線をそらした。
そんな彼女を画面越しに見つめながら、瞳を細めて優しく議長が声をかけた。

「タリア、一度彼女と話をさせて貰えないかな。」

「え?」

「君がそんな風にやつれてしまわないよう、君に秘書をつけようと思うんだが・・・どうだろう。」

「・・・まさか、アスラン同様彼女もフェイスに任命なさるおつもりじゃないでしょうね。」

「いくら私でもそこまでの権限はないよ。」

面白そうに目を細める議長を見て、見えない所で拳を握り締めるタリア。

「だが、ザフトに入隊させれば、君も仕事を選んで彼女に頼むという面倒はなくなるだろう?」

「・・・」

「一度話を、させて貰えるね。」

頼むような口調だが、その眼差しは有無を言わせない迫力を持っている。
議長にそのように言われてしまっては、ただの一艦長に断る方法はない。

「・・・分かりました。私の方から彼女へ通達の上、そちらへ連絡します。」

「あぁ、ありがとうタリア。じゃぁゆっくり休んでくれたまえ。」

用件だけを告げると、通信はあっさりと切られた。
真っ黒になった画面を睨みつけながら、拳を机にぶつける。

「・・・全く、何処までかき回せば気が済むのっ!あの狸っ!!





BACK



Ifシリーズを続けるつもりはなかったんですが、レイのメールは誰に送られたのか?という私の問いに、議長しか思いつかなかったという回答を頂いたので、議長に登場願いました(笑)
・・・やっぱりこの人が出てきたらかき回されちゃいました(笑)
タリアさんの苦労が目に見えます(苦笑)
こうなったら取り敢えず次は議長と面会せざるを得ないでしょうね。
うっわぁ、妙にシリアスな話に進行したら嫌だなぁ・・・どうしよっかなぁ〜。
取り敢えず、タリアに「あの狸!」と言わせられたので満足した小話でした。